「歯ぎしり」「噛みしめ」について
  
 「歯ぎしり」「噛みしめ」は決して特異なことではありません。96%の人がしているという報告さえあります。誰でもしている一種のくせと考えてよいと思います。
 ですから、特に問題を起こさない限り、放置しても構わないのですが、ときには、次のような問題を起こします。
1.歯への障害     :歯の磨耗、歯の破折、歯がしみる、噛むと痛いなど
2.歯周組織への障害:歯肉炎、歯周疾患(歯周炎=歯槽膿漏)
3.顎関節への障害  :顎間接痛、開口障害、カックン音など
4.全身への障害   :顔面痛、頭痛、肩こり、腕の痺れ、腰痛など
5.その他        :舌痛症、むちうち症状、倦怠感など
 
 これらの症状のすべてが、「歯ぎしり」「噛みしめ」からくるわけではありませんが、無用な悪い癖はなくしておく方が良いと思います。
 このくせは眠っているときとか、かにかに夢中になっているときとかに起こるので気づきにくいし、治すのにも同じ理由でやっかいなものだと思われる方も多いと思います。
 治すための補助用のマウスピースを入れる方法もありますが、道具に頼るといつまでもそれを入れていなければならないし、止めればまた、戻ってしまいます。
 あなたが、本気になって治す気になれば意外と簡単に治っていくものです。
 では、その方法をお教えします。 
 
 1.まず、日中の気づきから始めます。
 〔1〕仕事などに夢中になっているとき、ふと気が付くとしっかり噛みしめていたり、舌を上顎に吸いつけていたりしているのに気付くと思います。そんなとき、肩を上下させ、首から上の力を思い切り抜いて、頬の力を抜き、歯をかみ合わせないようにしてから、そのまま再び仕事に向かってください。
 
 〔2〕できたら、始めのうちは、口許も半開きにすると良いのですが、人前をはばかるようでしたら唇は合わせても良いでしょう。
 
 〔3〕噛みしめるのをうまく気付くというのは、意外と難しいものです。そんな場合は、普段良く使うマジックインクとか、カラーテープとかで目印をつけて、それを見たら思い出すようにすると良いです。主婦の方でしたら、水道の蛇口やまな板、包丁の柄の背とかに。事務の多い人はペンの柄とか、キーホルダーとかに。また、車の人はハンドルにというように。
 
 2.日中はなんとかできるとして、問題は夜眠っているときのことです。
 眠っているときのことなど、コントロールできないと思っている人が多いと思います。しかし、「明日の朝4時に起きなければいけない」と思って寝ると、不思議とその時間に目が覚めるという経験をしたことはありませんか。眠っている間も、体内時計と「起きなければならない」という意識が共同作業をして、性格にその時間に目が覚めるというかなり難しいことを私たちはできるのです。ましてや、上下の歯をあわせないようにリラックスして眠るなどという作業は、「その気」になりさえすれば以外と間単にできるものなのです。成功の秘訣はあなたがどれだけ「その気」になるかにかかっているのです。
 
 〔1〕前準備
  @枕を低くしましょう。
 後頭部の一番出っ張ったところより首の付け根近くに枕をするようにします。そうすると頭が上を向くので、口が開きやすくなるからです。おもに仰向けに寝る人は、バスタオルをロール状に巻いて敷布団の舌に敷いてできるだけ長い枕をつくるのも良いでしょう。枕をしなくても済む人は奏してください。
  
 A布団に入ったら何も考えないようにしてください。
 もし、どうしても考えることがあれば、もう一度、布団から出て考えてください。布団の中は眠るだけのところと決めてください。あるいは、朝目覚めてから布団のなかで考える習慣をつけるとよい考えがでてきます。
 
 〔2〕本番
  @まず、思い切り噛みしめてみてください。1〜2秒後に、フッと顎の力を全部抜いてみて下さい。わずかに口が開くと思います。その位置が理想的なリラックスした位置で、このまま一晩中眠ってくれると一番良いのです。
 次に、思い切り大きな口を開いてから、今度はがくんと脱力してみてください。たぶん、ほぼ同じ位置に顎が閉じるだろうと思います。ただし、顎の関節が痛くて開けない人は無理せず開けられる所までで良いです。
  
  Aこのとき、呼吸をいっしょに合わせると良いと思います。つまり、力を入れるときに息を吸って、いったん1〜2秒止めてから、脱力するときに一気にはくのです。
  B次に、肩に思い切り力を入れて、1〜2秒してから突然脱力してください。このときも呼吸を合わせてください。同じように、胸、腹、太ももの脱力をして、最後に足の先からその日のすべての疲れとストレスを追い出してやるような気持ちで大きく息を吐き出しながら脱力します。何回もyはっていると、手のひらや足の裏あたりが少し温かくなった感じがしてくるかもしれ、ません。それを感じたら、もっともっと温かくなるのを感じてください。
  
  C最後にもう一度、顎の力が抜けていることを確かめます。
 
 〔3〕自己暗示
 呼吸に意識を傾け、吐くときに脱力するのを繰り返しながら、手足やお腹が温かくなってくるのを感じてください。また、吐くときに、自分がリラックスできる言葉を唱えるのも良いでしょう。たとえば「リラックス」 「いい気分」「いい気分」「楽だ楽だ」など何でも良いです。また、「噛んではいけないぞ」「歯を合わせない」「開いて寝る」などと言い聞かせます。
 そして次の朝、今あるすべての症状がなくなって、すっきり爽やかに目覚めるあなたの姿をイメージしながら眠りに入ってください。